京都府が民泊施設の優良認証制度の創設へ。府民や観光客の安心の実現。
訪日外国人の増加で不足している宿泊施設の受け皿として始まった民泊制度。
曖昧な制度内容や無許可での営業などで様々な問題点が浮き彫りになっている。運営する個人や事業者、物件の特定もままならない状況だ。
現在では近隣住民からの苦情や宿泊者とのトラブルが大半を占めているが、今後は犯罪や火災などの重大な問題が起こる可能性もある。
この現状に京都府は優良認証制度を創設すると発表したが、その内容と影響力がどれだけ発揮されるかが重要である。
京都府が民泊に優良認証制度を設けると発表
京都府の山田知事は「認証制度を全国に先駆けて導入し、府民や観光客の安心につなげたい」と発言した。
16日の府議会代表質問のなかで旅館業法の許可を取得している簡易宿泊所を対象に、優良な施設を認証すると述べた。
しかし、現在の問題点として民泊の仲介サイトで京都市内だけでも約2700件の民泊施設が掲載されている。京都市の調査によると市内の施設で旅館業法の許可を取得しているのは約7%程度しかない。府は現在も調査中ではあるが約8割程度が無許可であると把握している。
きつい言い方になるが、旅館業法の許可を取得している施設を評価することも大切かも知れないが、まずやるべきは無許可で営業している施設を特定し取り締まることではないだろうか。
きちんと許可を取得している個人や事業者は少なくとも法令を遵守する意思があるわけで、それなりに運営にも注意を払っていると期待できる。それより、届けを出さずに闇で運営されている施設は近隣住民にとっては脅威である。誰が運営し、誰が宿泊しているかも分からない状態で事故やトラブルが起きた場合にどう対処すればよいのか。
府は無許可の施設に対して簡易宿泊所の許可取得などを「助言」しているらしいが、助言という緩い対応にも疑問が残る。まずは無許可の施設を全て洗い出し許可が取得されない施設に対しては営業停止などの毅然とした対応をすべきではないだろうか。
飲食店や娯楽施設などはそれぞれに必要な許可や申請を行い事業を行っているにも関わらず、不特定多数の宿泊者を継続して受け入れる民泊に対しての対応があまりにも寛容でいい加減であるという印象を拭いされない。今後も増えるであろう空き家や空き部屋を有効活用し海外からの旅行者を受け入れ経済の活性化や、京都文化の発信などに民泊の担い役割は大きいと思う。それだけに事業者の義務や役割、利用者の安全、近隣住民の権利に対するルール作りが重要ではないだろうか。
ある企業が30歳以上の男女500人を対象に実施した「空き家、民泊に関する意識調査」の結果を参考に民泊のこれからを考えてみたい。
身近に空き家、空き部屋がある人の意識調査結果
この調査は大阪と東京在住の30歳以上の男女500人を対象に行われたものだが、興味深い結果になっているので京都府の制度策定の参考にしていただきたい。
【調査1】
○自宅の近所や生活圏に空き家・空き部屋がある・・・・・31.0%
あると答えた人の中で「不快に感じている」・・・・・・44.5% 「勿体ないと感じている」・・・・・25.8%
【調査2】
○空き家や空き部屋をどう活用してほしいか?
「売却して更地にし土地を活用してほしい」「賃貸物件として誰かに定住してほしい」・・・・・半数以上
【調査3】
○近所の空き家や空き部屋が「民泊」に利用されるとしたら?
賛成・・・7.6% 安心安全が確保されれば賛成・・・43.6%
反対・・・25.4%
と、約5割は民泊に対して前向きな回答をした。
【調査4】
○安心安全を担保するにはどうしたら良いか?
①ルールの厳守を法律や条例で徹底させる・・・・・76.6%
②罰則の強化・・・・・43.6%
③防犯カメラや火災報知機の設置・・・・・43.1%
④民泊運営者や運営会社の管理・・・・・40.4%
⑤緊急の際に警備会社や管理会社が駆けつける体制・・・・・39.4%
この調査結果から法律や条例の強化、設備面での安全安心の確保、トラブルの際のサポート体制を整えることで民泊施設の受け入れを許容する結果となった。
現在、起こっている民泊に関する問題点は地域や場所に関係なく共通のようで、京都で起こっている問題の解決にも直結する回答が並んだ。ぜひ、行政の関係者は参考にしていただきたいと思う。
不動産の所有者に対する民泊活用意識調査
【不動産を所有する164名を対象に民泊に対する意識調査】
○自分の不動産を民泊として活用したことがあるか?・・・・・4.9%
○民泊として活用したいと思うか?・・・・・28.1%
【民泊として貸し出したくない理由】
○物件を汚されるのがイヤ・・・・・59.3%
○近隣住民からの苦情が心配・・・・・45.8%
○火災などのリスクが大きい・・・・・45.8%
○清掃や鍵の受け渡しなどの管理ができない・・・・・41.5%
この結果から、不動産の有効活用として民泊は選択肢に入るが運用後の手間暇や近隣住民からのクレームや火災や犯罪のリスクを考えると二の足を踏む割合が多いようだ。
様々な宿泊者を継続して受け入れるという事は、いつ何が起こるかわからないので気の休まる暇がないのではと考えるのも当然かもしれない。
まとめ
近隣住民も不動産オーナーも不安に思う点は共通しているようだ。民泊制度が解禁されてから今の段階での問題点はある程度、浮き彫りになってきているのだから、その解決方法と改善策に焦点を絞って制度の見直しを行うべきではないだろうか。
一番重要なのは近隣住民、宿泊者、貸主の3者が安全安心に民泊を活用できる制度作りではないだろうか。